Client Case Studies
大鵬薬品工業株式会社
薬や健康に関わる製品をより早く市場に届けるため、デジタルをテコとした変革に果敢に取り組む大鵬薬品工業株式会社。その前線に立つデジタル・IT統括部では、プロジェクトを計画的に、しかも関係者を巻き込みながら確実に実行する力の底上げを必要としていた。そこで同社が目を向けたのが、ULSコンサルティングが提供する実践型プログラム「変革Dojo」だった。約2カ月の短期集中で、プロジェクトマネジメントなどの実践力を磨いた舞台裏とは──。(文中敬称略)
※変革Dojoについては、サービスサイトをご覧ください (https://www.ulsconsulting.co.jp/dojo/)
※登場人物の所属組織名および役職は取材当時(2026年6月時点)のものです。
大鵬薬品工業株式会社 デジタル・IT統括部 部長・CDIOの保﨑行雄氏(右から2人め)、同部 副部長の古川真也氏(左から2人め)、人材育成を支援したULSコンサルティング株式会社 マネジャーの三橋由華(一番左)、同社の北岡真弥(一番右)
──大鵬薬品工業株式会社にとってのDXの必要性、あるいは今それが課題となっている背景をお聞かせください。
保﨑:DX、特に変革・トランスフォーメーションの重要性については、数年前から経営トップ自らが社内に対して重要性を説いています。患者さんに必要な薬や健康に関わる製品をより早く、確実にお届けするためには、従来の業務の延長では限界があるという危機感が背景にあります。デジタル化は目的ではなく、デジタルを手段として組織や仕事の進め方そのものを変革し、新しい製品を短期間で市場に届けられる体制・仕組みを創ることがDXの本質だと捉えています。
──研究開発部門やMR(医薬情報担当者)など職種を問わず、全社員がDXの対象になるということでしょうか。
保﨑:はい。DXは特定部門だけの課題ではありません。創薬から治験、製造、販売までバリューチェーン全体を連携させ、効率化する必要があります。もちろん、社内にITサービスを提供し、DXを推進する私たちデジタル・IT統括部としても自ら率先して変革していくと共に、各バリューチェーンで変革を起こせる人材育成に取り組む必要があると認識しています。
──デジタル・IT統括部はどのような組織なのか、あらためて教えてください。
古川:デジタル・IT統括部は、一般的な情報システム部門とDX推進部門が一体となった組織です。元々ITを専門としていた社員に加え、ここ数年で業務部門からの異動者が増え、現在は半数程度が各業務領域のドメイン知識・業務経験を持つ人材となっています。
──全社的なDXリテラシー向上や、デジタル・IT統括部自身の人材育成について、これまでどのような取り組みをされてきたのでしょう。
保﨑:ここ数年のDX推進の取り組みの中で、全社に向けた情報発信やトレーニングの提供、DXスキルアセスメントの実施をしてきました。一方で当部内の教育は、どうしてもOJTが中心で、体系立てた教育はあまりできていなかったのが実情です。業務に必要となるIT専門知識は、外部の講習会で学んでもらうケースが多かったですね。
──具体的には、どんな課題を感じていましたか。
保﨑:以前のIT部門に対してはプログラム能力や、データベースを扱うといった専門的な技術力が求められていましたが、近年は業務に特化したパッケージを導入するケースが増えており、自社業務に最適な製品・サービスの目利き力や、業務部門と連携しながらビジネスフローを見直す調整力などの重要度が高まっています。IT専門知識・技術といったハードスキルについては従来の仕組みでも一定程度の対応はできていましたが、調整力や計画力、やりきる力といったソフトスキルの面で、十分な育成が出来ていない点で焦りがありました。
──そうした中で、ULSコンサルティングの「変革Dojo」と出会ったのですね。
三橋:先ほど保﨑さんが挙げられた課題は、まさに変革Dojoが想定する課題感と重なる部分が多く、ご提案させていただきました。
保﨑:世の中には、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)に沿った研修などはいくらでもあります。ただし、1週間のコースに参加して知識を身に付けたとしても、それが現場ですぐに活かせるかは別問題。活かせない知識は時間の経過とともに失われ、個人・現場に定着せず、効果も成長も生まれません。ULSコンサルティングの提供する変革Dojoのコンセプトは現場密着で伴走しながらプロジェクトマネジメントのあり方などを伝授し、実業務への定着を支援してくれるとのことで、支援を受ける価値があると判断しました。

──実際に、変革Dojoは何名が受講されたのですか。
古川:4名です。30代が3名、40代が1名で、IT一筋の社員もいれば、MR出身、他社からの転職者もおり、バックグラウンドはかなり多様なメンバーでした。
──選ばれた方々の反応は?
古川:4名のうち2名には、私から直接声をかけました。主にITプロジェクト管理を担当する主軸となるメンバーで、良い機会だからぜひやりたいと前向きな反応でした。残る2名は他の方からの打診でしたが、同様に前向きに受け止めてくれたと思います。
保﨑:私から声をかけたMR出身でIT歴が浅い社員は、プロジェクト管理を意識して習得する機会自体が少なかったため、とても喜んでいました。もう一人、IT歴が10年ほどのベテラン社員も、自分流のやり方を体系立てて見直す良い機会だと捉えてくれました。
──実際のプロジェクトに当てはめながら進めたのでしょうか。
保﨑:4名共通で参画している実際のプロジェクトが実施タイミングでは存在しなかったため、部門としての業務改善プロジェクト(AI活用、業務改善をテーマとしたプロジェクト)を立ち上げ、4名の業務目標を明確に設定した上で、ULSコンサルティングに伴走していただく形を採りました。
三橋:補足すると、受講者に向けて実施にあたり、キックオフの場でプログラムの内容と全体の進め方をご説明した上で、「これは研修ではありません」と強く申し上げました。研修だとどうしても受け身になり、聞いて理解するだけの参加型になってしまいます。私どもはあくまで助言をするだけで、自分たちで考え、自分たちで動いてもらうことが変革Dojoだと最初にはっきりお伝えするようにしています。
──具体的なプログラムの進め方について教えてください。
三橋:基本は丸1日のセッションを計8回、これを週1回のペースで2ヶ月間かけて実施しました。弊社に来ていただき、1日を通じて、座学による理論や小規模なケーススタディ演習を行い、後半に実践プロジェクトの時間を設けるという形です。理論を教えては実践に戻り、課題の抽出やスケジュールの立て方などを改めて取り組むというように、理論と実践を行き来しながらプログラムを進めました。後半には追加のセッションを設けて補ったほか、他部門との調整会議にも同席させていただき、その様子を拝見しながら、1on1での個別フィードバックやアドバイスも随時行いました。
──プロジェクトマネジメントというテーマに対して、評価すべきベーススキルをどのように定めたのでしょうか。
三橋:経済産業省が定める「社会人基礎力」をベースとし、保﨑さん、古川さんとの協議を通じて6つの評価軸(主体性、働きかけ力、実行力、課題発見力、計画力、柔軟性)を絞り込んだ上で、プロジェクトマネジメントの各局面において望ましい行動や発言のあり方を評価することとしました。例えば「主体性」については物事を自ら進める姿勢、「働きかけ力」は、関係者に働きかけ協力を仰ぎ円滑に仕事を進めるなどを評価項目に結び付け、セッションを通じて指導しました。あわせて、スケジュール作成の精度や宿題への取り組み状況も確認し、一つひとつの業務の進め方を丁寧に見ていきました。
──4名のメンバーの成長を実感できましたか。
北岡:私は、メイン講師として講義や助言を行う三橋とは別の立場で、演習中の様子を横から観察し、異なる視点から助言する役割を担いました。その立場から見ても、プログラム開始当初と終盤では、皆様の熱量に明らかな変化がありました。特に後半、実践プロジェクトを詰めていく段階では、期限に向けて意欲が高まっていく様子や、三橋が講義で伝えた内容を実践しようとする行動の変化に目を見張りました。短期間で集中的に取り組んだからこそ、実際に身につく形につながったのではないかと感じています。
──どのようなことが、特に効果的だったと感じていますか。
北岡:マイルストーンから逆算して必要な作業を洗い出すことです。スケジュールをホワイトボードで作成して付箋を動かしながら議論することで、間違えても修正すればよいという柔軟な姿勢を促しました。皆が発言しやすくなり、スケジュールを組む力も身に付けていただいたと思います。
古川:第三者であるULSコンサルティングが関わることで、各メンバーの強みや弱みを客観的に把握し、社内のOJTでは得られない、第三者の鋭い視点による指摘も行っていただけた点に感謝しています。社内からの指導だけではなく、客観的な指導により受講者の自己認識への気づきをあたえる面でも期待通りの効果がありました。
──変革Dojoを終えたメンバーの様子を見て、率直な印象はいかがでしたか。
古川:北岡さんのお話の通り、学んだことを実業務で活かそうとする姿勢や高いモチベーションがはっきり感じられました。一回り成長して戻ってきたという印象です。今後は、その状態をどれだけ継続できるかが重要だと考えています。

──そうした実践力を、今後どのように定着させていくかが重要ですね。
古川:学んだことを忘れず、実務で活かせているかどうかを、人事評価や面談の場でも確認していきたいと考えています。一時的に成長して終わるのではなく、実務を通じて緩やかにでも成長を続けられるよう、部門として支援していきたいです。
──ULSコンサルティングとして、今後のフォローアップは予定されていますか。
三橋:定着を確認するため、プログラム終了から約6カ月後にアフターフォローを予定しています。アンケートや個別の1on1、振り返りセッションを想定しています。
──今後、他のメンバーにも変革Dojoを展開していくお考えはありますか。
保﨑:計画的にプロジェクトを進める力は、デジタル・IT統括部はもとより社員全員が身に付けるべきものだと考えています。今回は4名からの小規模なスタートでしたが、変革Dojoを通じて不得意な部分を着実に底上げできる価値を実感しました。今後は、コストや期間、より本質的なプロジェクトへの伴走を含めた業務状況を踏まえながら、対象範囲の拡大を検討していきたいと思います。
変革Dojoについては、サービスサイトをご覧ください
https://www.ulsconsulting.co.jp/dojo/

保﨑 行雄 氏

古川 真也 氏

三橋 由華

北岡 真弥