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サントリーホールディングス:短期集中の「共創型」アセスメントでDataOpsの足元を固める

Client Case Studies
サントリーホールディングス株式会社

サントリーホールディングス:短期集中の「共創型」アセスメントでDataOpsの足元を固める

データ利活用の巧拙が企業競争力に直結する現代において、その成熟度を組織全体で高める取り組みが不可欠だ。サントリーホールディングスはULSコンサルティングの支援を受け、DataOpsを視野に入れた短期集中のアセスメントを実施。自社の現状を客観的に把握し、セキュリティガバナンスの整備から業務フローの再設計まで、現場がすぐに実践できる解決策を導き出した。(文中敬称略)

サントリーホールディングス株式会社 デジタル本部 情報システム部 部長の加藤芳彦氏(右から2人め)と
情報システム部 課長の水谷雅典氏(左から2人め)。
データ利活用高度化に向けたアセスメントで支援したULSコンサルティング株式会社の中村大輔(一番左)と松田和雄(一番右)
※登場人物の所属組織名および役職は取材当時(2026年3月末時点)のものです。

──サントリーホールディングスにおけるデジタル本部の体制、データ利活用に向けたこれまでの取り組みを教えてください。

水谷:デジタル本部は大きく3つの組織で構成されています。デジタル戦略を立案する組織、それを全体として推進する組織、そして策定されたプランを実行・実装する組織です。私たちが所属する情報システム部は、3つ目の実行・実装を担う部署となります。

データ利活用は、飲料部門や酒類部門などの事業サイドが基本的な戦略を立て、デジタル本部がその基盤を整備するというフォーメーションで臨んでいます。かつては事業ドメインごとに業務システムのデータをCSVで抽出し、表計算ソフトのマクロで分析するといった作業が各所で行われていました。ただ、それではあまりにも効率が悪くスピード感も出ないということで、全社共通のデータ分析基盤を整え、2021年頃から徐々にデータを蓄積していきました。2024〜2025年にかけて、ある程度データが整った状態が出来上がったと言えるでしょうか。

加藤:経営層からの強い後押しもあり、データドリブンの業務体制を確立すべきという機運が高まっていました。データ基盤の整備と並行して、データリテラシーを全社で向上させていく専任チームも生まれました。基盤整備とリテラシー向上を車の両輪として歩み進めてきたのがここ数年の流れです。

ビジネス価値を最大化するアプローチ

──データ基盤整備を進める中で、どのような課題が顕在化してきたのでしょうか。

水谷:まずはセキュリティに関するリスクです。データ利活用の範囲が広がる一方、ガバナンス体制の整備が追いつかず、情報漏えいなどへの対策が喫緊の課題となりました。もう一つは役割分担の問題です。前述のとおり、事業側からのデータ活用要求に対し、私たちがデータを整備・提供する役割を担うことになりましたが、リソースに限りがあることもあって即応しにくい状況が続いていました。

私どもとしては、データに関わる一連の取り組みを見直してビジネス価値を最大限に享受していくことが大きなテーマでした。その中で関心を寄せていたのがDataOpsのアプローチです。

──セキュリティリスクへ対策をうちつつ、データを使う側の立場を意識して、⾼品質なデータを俊敏かつ継続的に提供しなければならないと。

水谷:はい。そのDataOpsを本格的に機能させるためにも、自分たちの組織やプロセスを客観的に見直す必要があると感じていました。

加藤:DataOpsの方法論に、以前から高い関心を持って実践を目指していました。とはいえ、社内には方法論を具体へ落とし込む知見が不足しており、支援してくれるベンダーもなかなか見つからない状況が長らく続いていました。

腹落ちできるDataOpsを目指して

──そこでULSコンサルティングとコンタクトを取られたのですね。アセスメントを依頼するに至った経緯をお聞かせください。

加藤:ULSコンサルティング(当時のウルシステムズ)との縁は20年以上前にさかのぼり、Javaベースの業務システム開発で支援いただいたのが最初の接点だったと記憶しています。その後、しばらくブランクがあったものの、自販機キャッシュレスアプリ「ジハンピ」のプロジェクト支援(https://www.ulsconsulting.co.jp/news/press/2025-04-10.html)で再び深くお付き合いすることとなりました。その流れでDataOpsに関する悩みを伝えたところ、専門的な知見を有していることが分かり、アセスメントを受けることを視野に具体的な相談に乗ってもらうことになりました。

──ULSコンサルティングとして、サントリーホールディングスさんからの依頼にどのような姿勢で臨みましたか。

中村:データ利活用の支援はこれまでも多くの実績がありますが、DataOps自体は比較的新しい概念です。組織開発の考え方やデータ基盤整備のノウハウを組み合わせ、最新の知見を継続的に取り入れながらご支援する形となります。よくあるアセスメントは「○×表」を用いた採点・評価に終始し、「これが正解です」と示すだけで予算取りのための資料作成に終わってしまうケースが珍しくありません。その壁を打破し、お客様が本当に腹落ちできる進め方を提案することを、最初から強く意識していました。

3カ月間の短期集中で進んだアセスメント

──アセスメントは具体的にどのような形で進められたのでしょうか。

水谷:2024年10月から12月にかけての約3カ月で実施しました。Microsoft Teamsを用いた週次のリモートセッションで、現状把握と改善策の検討を並行して進めていただきました。

ファシリテーションをULSコンサルティングにお任せしましたが、セッションごとにアジェンダと事前準備事項を明確にした上で、スムーズに進めていただきました。少し時間が余った際には推薦書籍を紹介いただくなど、非常に密度の濃いセッションでしたね。毎回、新たな気づきが必ずありました。

中村:ありがとうございます。私たちが常に意識したのは「共創」をベースにしたセッションの進め方です。特にデータ利活用に関するテーマはステークホルダーが多く、複雑性も高いだけに、お客様と悩みを共有し、一体となって課題解決を探る姿勢が、真の価値提供につながると考えています。

加藤:この過程でセキュリティ施策の検討はNIST(米国国立標準技術研究所)のガイドラインをフレームワークとして活用することになりました。世の中の標準に拠り所を持つことで、社内の理解も得やすくなるため、この提案はとても助かりました。

松田:セキュリティ施策の検討は、当初は一般的な観点から項目を整理して始めたのですが、途中で「グローバル標準に準拠した形にしたい」という意向を伺い、NISTのガイドラインを基準として採用することにしました。ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)も選択肢の一つでしたが、今回の目的は認証を取得することよりも、データ基盤の安全性を網羅的に担保しつつステークホルダーが納得できる形へすることに重点を置きました。

──アセスメントの最終的な成果物はどのようなものでしたか。

水谷:DataOps推進に向けた取り組み全体の最終報告書と、セキュリティ領域で対策すべき116項目におよぶリストが納品されました。これらのリストは、そのまま業務で使えるレベルで整理されていたのが大きな特徴です。

松田:データ基盤は重要なデータを保持しているため、方針を示すだけではなく、現場の運用業務に具体的な形で落とし込み定着させることが大切です。これまでのノウハウから、単に方針だけを示しても現場に定着しないことがわかっていたため、方針だけではなく現場の運用担当者が実際に使える手順のひな形も整理しました。ユーザーの追加・変更・削除、組織異動に伴う権限変更など、具体的な業務において「こういう形で設定してください」という手本を示しながら、116項目のリストをまとめています。

短期集中でも成功につながった要因とは?

──今回のアセスメントを終えて、全体的な満足度や率直な感想をお聞かせください。

水谷:とても満足していますし、腑落ちもしています。理由は、先にも述べた「そのまま業務で使えるリスト」をいただけたことにあります。世間一般的に、アセスメントを受けた後に「正解は分かったが、どうやってそこに向かうのか」と悩んでしまう例も多いと思いますが、今回はそんなことは一切ありませんでした。実践を踏まえたアウトプットだったことから、報告書の内容をそのまま社内の役割分担や業務フローの改善に落とし込むことができました。

加藤:私たちの依頼に対して、プラスアルファの支援をいただけたことが、高い評価につながっています。コンサルティングファームにありがちな"上から目線"の疎外感はまったくなく、お互いに腹を割って話せたことは私としても非常に良かったです。

──約3カ月間という短期集中型では、できることが限られるという側面はないのでしょうか。

松田:逆に、短期間だったからこそ良かった面が多々あります。期間が長くなるとどこかで息切れしてしまったり、焦点が定まらなくなったりすることが起きがちです。セキュリティを例にとれば、フォーカスゾーンが広がり過ぎて議論が散漫になるといったパターンですね。早期に、「まずどこに注力するか」という判断を下していただけたことが、今回のアセスメントの成功要因です。

中村:まさしく、短期間で期待に添う成果が出せたのは、お客様が業務を熟知されていたこと、やりたいことを明確にリクエストしていただいたこと、そしてステークホルダーを絞り込んでいただいたことが大きな要因となっています。

もちろん短期が良いという短絡的な話ではなく、達成したい目的や組織の状況によってかかる期間は変わりますが、今回のアセスメントは短期型でもスムーズな合意形成を進め、最大限の成果を出すことができたと自負しています。

加藤:プロジェクト全体を通じて、私たちも「依頼側からのリクエストを明確に伝えること」の重要性を改めて実感しました。

事業側の要求にスピード感を持って応えていく

──アセスメントの成果を受けて、今後どのような取り組みを計画していますか。

加藤:事業側の要求に対してスピード感を持って対応できる体制を作ることが、私たちの一貫した目標です。「こういう分析をしたい」という要求を受けてからデータが使える状態になるまでのフロー全体を最適化し、リードタイムを短縮することで、事業部門はもっと動きやすくなると考えています。

水谷:スピード感を追求しつつ、データに関する品質やセキュリティなどガバナンスを効かせる所もしっかりとバランスさせて、データ利活用をもっと進化させていくことが大きなテーマです。

──同様の課題を抱える企業に向けて、メッセージをいただけますか。

中村:「データ利活用はそれほど簡単ではない」という認識を持つことが重要です。生成AIの普及などもあり、「ハードルは下がった」と思われがちですが、単にツールを用意すれば解決する単純な問題ではなく、常に変化するビジネス環境を捉え、打ち手を修正し続けていく必要があります。その複雑さをまず認識した上で、私たちのような外部の知見も活用しながら歩みを進めていただくことをお勧めします。

加藤:データ分析は結果を出す部分が注目されがちですが、その前段としての設計プロセスが不可欠です。どんなデータが必要か、そのデータはどんな形で整理されていなければならないのか──。ある意味でシステム開発に近い取り組みが求められます。データドリブンな組織を目指すならば、この点を正面から受け止めることが大切だとお伝えしたいですね。

企業概要

企業名
サントリーホールディングス株式会社
事業内容
酒類や飲料、食品、ウエルネスなど多彩な事業会社をグループに擁し、それら全体の経営戦略の策定や統括、コーポレート機能(法務、経理、人事ほか)などを担う

人物

加藤 芳彦 氏

加藤 芳彦 氏

サントリーホールディングス
デジタル本部 情報システム部 部長
水谷 雅典 氏

水谷 雅典 氏

サントリーホールディングス
デジタル本部 情報システム部 課長
中村 大輔

中村 大輔

ULSコンサルティング
データコンサルティング部 マネジャー
松田 和雄

松田 和雄

ULSコンサルティング
データコンサルティング部 シニアマネジャー