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ダイキン工業:研究開発部門が主導して付加価値ビジネスの拡大を加速

Client Case Studies
ダイキン工業株式会社

ダイキン工業:研究開発部門が主導して付加価値ビジネスの拡大を加速

グローバル展開に力を注ぎ、空調機器市場で高いシェアを獲得してきたダイキン工業。次なるテーマに位置づけるのが、独自の付加価値を競争力とするソリューション事業の確立だ。その一環として、研究開発部門ならではの知見を世界各地でタイムリーに活かす基盤整備に挑むも、その道は平坦ではなかった。幾つもの難局をどう乗り越えたのか──。(文中敬称略)

ダイキン工業の前川博志氏(右から2人め)と武内敏文氏(左から2人め)。
プロジェクトを支えたULSコンサルティングの小出泰喜(一番右)と風見恵介(一番左)

──貴社が推し進めているグローバル展開の現況と、市場でどのようなアドバンテージを打ち出そうとしているのかについてお聞かせください。

前川:ダイキン工業は既に世界170カ国以上で事業を繰り広げており、空調市場での「機器売り」においてグローバルで高いシェアを獲得してきました。各地に拠点を構え、地域ごとの顧客ニーズに合わせて開発を最適化することで、グローバル展開を支えてきた経緯があります。

さらに現在、全社戦略として力を注いでいるのが「ソリューション事業」の拡大です。保守・点検・更新といった空調バリューチェーン全体の運用・強化に加え、世界中に設置した大量の空調機から得られるデータの活用を推進しています。これにより他社には追随が難しい独自のコンテンツやサービスを提供することが、今後の大きな付加価値になると考えています。

──そのようなソリューション事業を拡大していくうえで、課題として感じていることや優先的なテーマと位置づけていることは何でしょう。

前川:先ほどお話ししたように、地域に最適化した開発を続けてきたことは弊社の大きな強みです。その反面、作業工数や開発費などがグローバル全体では膨大になっており、人材不足もあって開発を加速しきれない点が課題とも言えます。

武内:特にソリューション事業では、顧客のニーズにいかに迅速に応えていくかが重要になります。そのため、この課題を乗り越え、グローバルでソリューション事業を実現していくことが、今後の大きな伸びしろであり、取り組むべきテーマだと考えています。

独自の知見をグローバルの価値へ

──お二人が所属するテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)は、どういった役割を担っているのでしょうか。ソリューション事業にも深く関わると推察します。

前川:TICは、ダイキングループの技術開発の中核拠点として、基幹事業のコア技術力で世界ナンバーワンを達成し続けることを目指しています。社内外との協創による技術革新と価値創造を通じてイノベーションを生み出し、研究開発のスピードと成果を最大化することが役割です。

その中でも情報通信グループは、IoT技術・通信技術・ソフトウェア技術・ハードウェア技術を軸に、ソリューション事業を技術面から支えています。技術者の成長や新たな挑戦の場をつくることも大切にしています。

──研究開発の成果がどのような市場価値へとつながるのか、もう少し具体的に教えてください。

前川:例えば大規模施設において空調機器のスペックの選定が難しい場合、根拠を示しながら「このモデルのこの性能で十分に空調を効かせることができます」と提案できれば、コスト面でも性能面でもお客様にとって最適な機器を選定できますよね。研究開発の成果をうまく活用できれば、最適な性能値の算出が可能になります。

武内:そのほか、温湿度などエリアごとの実情に応じてエネルギー効率が最も優れた運転に自動で切り替えたり、異変を察知して予兆保全につなげたりといったことができます。各種センサーから取得するIoTデータなど多種多様なデータと、経験知とも密接に絡み合った独自のアルゴリズムとを組み合わせて最適解を導き出します。このようなデータ活用の知見を、社内では「差別化ロジック」と呼んでいます。

──まさにTICの知見が凝縮されており、貴社ならではの強みですね。これを市場競争力に結び付けるために意識していることはありますか。

前川:ソリューション事業をグローバルで加速させるには、差別化ロジックやそれをベースとするサービスをいかにタイムリーに市場へ届けられるかが重要です。法規制の変化などにより、顧客ニーズは日々変化していますから。

武内:そこで私たちは、差別化ロジックを迅速に提供できるプラットフォームの研究開発に取り組み、グローバルで共通の仕組みとして展開することを目指しています。これが今、ULSコンサルティング(以下、ULS)さんに支援していただいているプロジェクトです。

共に歩むパートナーを求める

──やっとULSの名前が出てきましたね。最初の接点はどこにあったのでしょう?

前川:差別化ロジックをグローバル展開していく道筋をつけるにあたって、クラウド領域で注目されているテクノロジーや方法論を積極的に取り入れていきたいと思う一方で、 社外の知見を借りたいと感じる面もありました。コンテナやKubernetesなど個別の技術に明るい人材はいるものの、より良いものにするためには多角的な発想が必要でした。

そこで、別案件で付き合いのあった方に「アジャイル開発ができて、SREができて、プラットフォームエンジニアリングができる企業に心当たりありませんか?」と、無茶なメッセージをSlackで送ったんです。真っ先に名が挙がったのがULSさんでした。共に歩むパートナーという位置づけです。

──グローバルで展開する難しさもありそうですね。

前川:そうですね。地域によって技術基盤や前提条件が大きく異なるため、単一の仕組みをそのまま横展開することができず、「統一したいが統一しきれない」というジレンマがありました。そのため、既存環境を否定せず、横に接続する形でグローバルに展開できる仕組みを検討する必要があったものの、技術的にも組織的にも非常に難易度の高い取り組みでした。

武内:そのような状況の中で、ULSさんがよかったのは、単なる開発ベンダーではなく「伴走者」として関わってくれたことです。まだ方向性を探っている段階でも受け身にならず、「こうした方が良いのではないか」と積極的に提案していただきました。また、アプリケーション開発だけでなく、プラットフォーム設計やチーム運用、さらにはメンバー育成まで踏み込んで支援いただいた点も非常に大きかったです。変化の激しいプロジェクトの中で、一緒に方向性を考えながら柔軟に動いていただけました。

──具体的には、どのように進めていかれたのですか?

前川:我々としては、比較的シンプルな案件を通してアジャイル開発の進め方を伝授してもらい、人材教育なども含めてある程度の伴走期間を設けてもらえば、その先は自走できるんじゃないかと見込んでいました。今にして思えば、この認識が甘かったのかもしれません。ともかく当初はミニマムスタートでULSさんに支援してもらおうと考えていたんです。

風見:ところが、いざ蓋を開けて現場のリーダーの方々と会話してみると、「実は頭に引っかかっていることがありまして......」と懸念事項が次々と出てきました。リストにまとめると30件にもなったでしょうか。海外拠点への展開方針など、広範囲に及びました。

アプリケーションやシステムというものは、実務担当者に受け入れられ、現場に定着して継続的に使われてはじめて意味を持ちます。だからこそ、列挙された課題を見過ごすわけにはいきませんでした。当初はアジャイル開発支援としてお引き受けした案件でしたが、根の深い問題を整理し解決の方向性を定めない限り、ダイキン工業さんのためにはならない----そう腹を括りました。

小出:最初の1カ月くらいは会話がうまく噛み合わなくて、お互い苦労しました。ダイキン工業さんが競争力を発揮するためにやるべきことや、TICが自らアイデアを形にするために身に付けるべきことなどレイヤーの異なる話がゴチャ混ぜになっている印象でした。そこで、双方の東京・大阪のオフィスを行き来し、インセプションデッキなどの手法を使いながら課題を洗い直しました。それを機に、両社の目指すべき方向が一気に揃い始めましたね。

風見:この段階で、「開発プロセスだけでなく、基盤・運用・展開方針まで含めて検討する必要がある」という共通認識ができたのは、非常に有意義だったと思います。

関係者全員が納得する落とし所

──結局、ULSの支援範囲はどうなったのでしょうか。

小出:現在は、ロジックを実サービスに活かすための「アプリ開発」、データを処理してアプリに引き渡すための「プラットフォーム構築」、全体としての「プロジェクト管理」を担っています。TICの目指す様々な知見を市場価値に結実させることを念頭に、ULSとしてITを中心とした支援を共に伴走し叶えていくことを強く意識しています。

風見:アプリやプラットフォームをどのようなコンセプトで提供するのか、そのためにどのような設計方針とするかの難易度が高かったですね。ステークホルダーも多いので調整にも苦労するだろうなぁ、と。技術面にしても関係者との折衝にしても、"うまい落とし所"を決めるのがカギで、知恵や工夫が問われます。

──差し支えない範囲で、どのような考えの下で、どのような構成にしたかを教えてください。

前川:IoTデータを活用した制御の最適化というトレンドの下で、世界各地の拠点は既に一定の取り組みを進めてきました。先ほども話したとおり、それぞれが独自のクラウド環境やIoT基盤を活用しているのに加え、データ形式や認証方式などにも違いがありました。そうした状況下で日本側の考えを一方的に押しつけても摩擦が生じるのは自明です。

そこで、各拠点の既存の基盤はそのまま生かし、「新しいプラットフォームを横に置いて既存環境と連携させる」という方針で研究を進めています。IoTデータについては先々を見据えて標準形を定め、そこに寄せてもらうことにしました。海外拠点に足を運んで意見交換を重ね、複数拠点が集まって議論を深めるなど、丁寧にすり合わせながら進めてきました。

詳細はさておき、技術的な観点ではマイクロサービス群の疎結合のようなアーキテクチャを採用したのが特徴と言えるでしょうか。

風見:前川さんがおっしゃったような考慮点を各拠点にどのようにメリットとして伝えていくか、現場リーダーの方と悩みながら何度も考えました。長期的な利用シーンを踏まえてどのように段階的に進めていくイメージなのか、運用は成り立つのかなど、ディスカッションしながら認識をそろえていきました。まだ取り組みの真っ只中で、一区切りつくにはまだ少し時間がかかりそうです。

パートナーとの信頼関係が競争力に

──当初の計画より長いお付き合いになりそうですね。

武内:はい。ULSさんに支援をお願いする際の費用感は、我々からすると相対的に高い水準にあるのが正直なところです。それでも継続をお願いして支援の規模を広げていただいている理由は、「ただ言われたことをやる」のではなく、「ゴールに近づくにはこうすべきだ」と実直に提案してくれる点にあります。必要と思えば、とことんやり抜く姿勢が徹底しています。

前川:ULSさんは社名とは違ってコンサルっぽくないところがいいですね。上から目線で何かを教えるやり方ではなく、私たちが本当に望んでいることを一緒に考えた上で、結論を出す手伝いをしてくれます。

小出:嬉しいお言葉をありがとうございます。

──今後に向けた展望をお聞かせください。

前川:TICとしては、技術・人材・組織それぞれの観点で基盤整備を進めながら、中長期的に価値を生み出し続けられる仕組みを構築していきたいと考えています。

武内:内製強化は引き続き推進していきます。ULSさんのような外部パートナーとフラットに議論しながら取り組むことで、自分たちだけでは気づけなかった視点や選択肢が得られることを実感しました。ですから、パートナーとの関わり方もあらためて議論していきたいですね。

小出:例えばAI駆動開発のあり方など、両者の間で熱い持論が繰り広げられるテーマは多々ありますので、これからも機会があればタッグを組んで活発に議論を交わす日々を送れたらと思います。

前川:一連の取り組みを通じて改めて感じているのは、顧客とパートナーが同じ目線で課題に向き合い、信頼関係を築くことが競争力になるということ。最後に価値を生み出すのは「人」であるという原点を忘れず、これからも挑戦を続けていきます。

企業概要

企業名
ダイキン工業株式会社
事業内容
冷媒開発、機器生産から販売、アフターサービスを自社展開する空調総合メーカー。日本をはじめ、北米、中国、アジア・オセアニア、欧州などグローバル展開を加速している。

人物

前川 博志 氏

前川 博志 氏

ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター
データ活用推進グループ 兼 情報通信グループ 主任技師
武内 敏文 氏

武内 敏文 氏

ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター
情報通信グループ 主任技師
小出 泰喜

小出 泰喜

ULSコンサルティング
シニアマネージャー
風見 恵介

風見 恵介

ULSコンサルティング
マネージャー